ちえの森ちづ図書館が「2021年2月19日 日刊木材新聞 気を惹く木の建築」に掲載されました。

ちえの森ちづ図書館
計画から町民参加で実現
木のぬくもりとコスト両立

鳥取県南東部の智頭町は、江戸時代から続く林業の町。人口7000人を切った町に昨年11月29日、町民待望の図書館がオープンした。

旧図書館は智頭町総合センターの一室(144平方メートル)にあった。不便な2階に収まり切らない蔵書が1、3階に分散し、新たな図書館を望む声が高まっていた。2014年に図書館づくり検討委員会を設置。町の第7次総合計画に図書館建設が盛り込まれ、図書館づくりがスタートした。
行政主導で使いづらい施設が生まれることは多々ある。図書館を核ににぎわいを生み出そうとの構想もあり、町民を交えたワークショップ(WS) を重ねることで計画を練り上げる道を選んだ。

17年8月の1回目のWSは定員を大幅に上回る参加希望を受け入れ、スタッフ含め66人で4か所の建設候補地を巡った。基本構想に続いてまとめた基本計画にはユニバーサルデザインによる安心・安全と、維持管理を含めた経済性、木のぬくもりを感じながら快適に過ごせることなどが整備方針として盛り込まれ、これを基に、設計委託先をプロポーザル方式で公募した。

公募には34社が応募した。1次審査で4社に絞られ、公開ヒアリングで徳岡設計(大阪市、徳岡浩二社長)を選定した。同社はWSに積極的に加わり、町民参加の図書館づくりをけん引した。

空間確保とコストを勘案して構造は鉄骨造とした。智頭らしい木のぬくもりを表現するため、小屋組みトラスには智頭杉の90×300㍉×5㍍と6㍍の長材が使われた。「仕様書は特1等だが、長く使う図書館にふさわしい材を選んだ」(大谷豪太郎智頭町森林組合組合長)と新図書館への思いを材料に込めた。

内部の書架やテーブル、机には智頭産杉で製造した3階Jパネルや智頭杉の柾目ツキ板を多用。外壁を含めた木材はサカモト(坂本春信社長)など町内の製材所が納めた。

ボランティアの手による開館前の蔵書の引っ越し作業は、地元中学生の発案だ。開館から2か月弱で1万人が来館。「わが町の図書館」は運営手法を含めて早くも町に浸透している。

建築メモ
<ちえの森ちづ図書館>
所在地=鳥取県八頭群智頭町2090-1
施主=智頭町
設計=徳岡設計
施工=ジューケン・原田特定建設工事共同企業体
構造=鉄骨造平屋(小屋組みは木造)
延べ床面積=1126平方㍍
総工費=約6億円(什器込み、一部備品は除く)。

日刊木材新聞 2021年2月19日より