10月8日は木材利用促進の日
求められる"川上"と"川下"の課題解決
10月8日は「木材利用促進の日」だ。 10月1日に施行された改正公共建築物等木材利用促進法は「脱炭素社会の実現」を理念に掲げており、官庁施設から民間施設へも対象が広がった建築物への木材利用を進めることで、世界的な環境課題に公共と民間の両者が取り組むことになる。 木材利用をさらに促進するためには、 木材に関わる“川上"と"川下”それぞれが抱える課題の解決が求められる。
まず「日本は森林面積の割に林業従事者が圧倒的に少ない」と、川上の課題について指摘したのは大阪府木材連合会の津田潮会長だ。“切り時”を迎えている人工林の伐採に携わる林業従事者の雇用を増やすためには「儲かる林業を目指さなくてはいけない」と、大阪府環境農林水産部みどり推進室森づくり課の田中武次課長は語る。「儲かる林業」を実現するためには木材が使われなければならない。鍵となるのは川上と川下のつながりだ。 大阪府建築士会の徳岡浩二特任相談役は「日本の山とまちのつながりは希薄だ。木造建築を増やすために山とまちで木材の情報を共有する必要がある」と話す。 供給側が山にある木材資源の情報を提供し、需要側にいる設計者が設計段階から使用したい木を指定することで、木材がしっかり行き渡る。少ない山林従事者でも効率的に木を切ることが可能だという。
国産材の需要増大が鍵
「儲かる林業」のために必要なもう一つの鍵が国産材の需要増大だ。日本国内にも影響を及ぼしているウッドショックは、外国産材への依存をあらわにした一方で、日本の木材需要の高さを示した。この需要を国産材に向けることができればいい。ただ、国産材を利用する場合にも大きな課題がある。 木造ならではの設計・施工を知る技術者の不足や木造建築物を維持管理する技術力の不足、耐久・耐火性のある製材技術の不足などだ。これらの課題に対抗するには「木造建築物について知るきっかけを作り、木材の利用方法を広く周知する必要がある」と林野庁近畿中国森林管理局の山口琢磨・前局長は話す。同庁では「ウッド・チェンジ・ネットワーク」という懇談会を設置し、民間非住宅建築物などの木材利用促進に力を入れ始めた。同様に大阪府は、府内の木材を活用した公共施設の木質化を促進する事業を展開、大阪府木材連合会と大阪府建築士会は大阪・関西万博の主要施設などでの木材活用を提案し、木造や木質化された施設に触れる機会を増やそうとしている。
官庁施設 木材利用を推進
また、国土交通省近畿地方整備局営繕部の髙井雅木課長も「法改正で民間に対象が拡大されたからこそ官庁施設の木材利用促進を一層進めたい」と、官庁施設の木材利用に引き続き率先して取り組むことで民間を先導する役割を担う思いだ。木材利用の促進に向け、 川上と川下にいる関係者が協力し合い、全体像を見ながら対策に取り組むことが双方の課題解決への近道になりそうだ。「木材利用促進月間」はあと2日間続く。木材利用を促進するために建設業界と林業界が連携を深め、できることを一丸となって考える期間にしたい。